1959年夏、長い冬を経てきたスウェーデンの人々にとって、待ちわびた美しい白夜の季節。眩しい太陽の下、男と熟女は出会う。
男は40歳の農夫。不器用で女性経験がなく、文字の読み書きも出来ない。熟女は男のもとにやって来た33歳の美しい家政婦。およそ田舎には似つかわしくなく、薫り立つ魅力に溢れている。
1つ屋根の下に暮らし始めた二人は、いつしか互いに惹かれ合う……。
スウェーデンの田舎町を舞台に、女性経験のない40歳の農夫と、美しい家政婦の恋を綴ったラブロマンス。本国スウェーデンで大ヒットし、99年度アカデミー外国語映画賞にもノミネートされた愛のドラマ。
主演は『スティル・クレイジー』のヘレーナ・ベリストレム。
北欧の美しい風景と、文盲で女性経験の無い、仕事一筋の農夫。朴とつな男性。
父親が早くに亡くなり、母親とふたり暮らしをしていたが、その母親も何年も前に亡くなって、ひとりで黙々と朝からから晩まで、働き続ける毎日。
一日の終わりに馬を湖に連れていって、水を飲ませる。傾きながらも沈まない太陽の光。
彼には友達がいて、毎朝卵をとりにきている。
文盲の彼は計算もよくわからず、多少お釣りをごまかされているのがわかってはいるのだが、それでも友達のことを信頼している。
その友達がいなかったら、彼は本当に孤独になってしまう。
全く女っ気のないままに40歳になってしまう。今更と人には思われながらも、彼は意を決して、年齢を39歳とサバ読み、新聞に家政婦の募集広告を出しに行く。
「孤独な農民、39歳、自家用車あり、家の世話をする若い女性求む」。
そして彼の前に現れた、どこか都会的で美しい、しかしワケ有りの熟女女性。年齢は33歳。
農道の道端でスーツケースに腰掛け、ガーター・ベルトを直すシーンがなまめかしい。
「先に髭を剃ってきてもいいですよ」と家政婦の熟女が言うと、彼は「髭は1週間に1回しか剃らない」と言う。
どうせそんなに人と顔を合わさないし、農作業に明け暮れているから、必要を感じない。
けれども、彼女が来て一日がたち、二日たち、三日もたつと、今度は毎日髭をそるようになる。
「お買い物は、これでよろしいですか」とリストを見せても、彼は読めないから、読んだふりをして、承諾をする。こうして、段々と彼女の存在が大きくなってくる。
「白夜」というロマンチックな現象を背景に、物語は黙々と、そして情熱的に進んでいく。
主演の二人に目を奪われがちだが、友人役を演じた俳優も若いながらも相当な演技派である。
「アブラハム渓谷」「階段通りの人々」のポルトガル映画界の巨匠、マノエル・デ・オリヴェイラ監督がファウスト伝説をモチーフに善悪の観念を交錯させる暗黒喜劇。
製作は『フランチェスカ』以来オリヴェイラの全長編作品を手がける「リスボン物語」のパオロ・ブランコ。
小説家アグシティナ・ベッサ=ルイーシュがゲーテの詩劇『ファウスト』から着想した物語を基に、オリヴェイラが脚本・台詞を執筆。
撮影は「アブラハム渓谷」「階段通りの人々」のマリオ・バロッソ、美術は「階段通りの人々」「リスボン物語」のゼ・ブランコ、編集はオリヴェイラと「神曲」以来オリヴェイラ作品に参加するヴァレリー・ロワズルーがそれぞれ担当。使用曲はソフィア・グバイドゥリーナの『ヴァイオリンと管弦楽のための協奏曲“オフェルトリウム"』と『チェロ、バイアン、弦楽のためのパルティータ“キリスト最期の七つの言葉"』の終曲、イゴール・ストラヴィンスキーの歌劇『放蕩児の遍歴』の第三幕への前奏曲、そして黛敏郎の『弦楽四重奏のための前奏曲』。
オリヴェイラは本作で初めて国際的なスターを起用し、「私の好きな季節」の仏熟女女優カトリーヌ・ドヌーヴ、「シェルタリング・スカイ」などの演技派の米国人男優ジョン・マルコヴィッチが主演。共演はポルトガルの名優でオリヴェイラ作品の常連、「階段通りの人々」のルイス・ミゲル・シントラ、「アブラハム渓谷」のヒロインのレオノール・シルヴェイラほか。
アメリカ人の文学教授マイケルが、熟女妻のヘレンを連れてポルトガルの山中にある古い修道院を訪ねた。
教授の目的はシェイクスピアの出生の秘密を明らかにする古文書を調査すること。
管理人のバルタールが夫妻を迎え入れ、老小使いのバルタザールに修道院の山を案内させる。
敬虔なカトリックを装うバルタザールと妻でメイドのベルタ、彼らは実は白魔術の伝承者であった。
修道院の書庫を管理する研究員ピエダーテ物静かで清純そうな美女だが、夫婦の星占いには不吉な兆候が見える。
一方バルタールは本格的な黒魔術の研究者であり、実はこの修道院自体が信仰の場とルシファー崇拝の場が表裏一体になった土地だった。
不吉さの漂う空気のなかで元々冷めきっていた教授夫妻の仲はいよいよ疎遠になり、バルタールはヘレンに言い寄って悪魔崇拝の遺跡を見せ、教授にはファウストを説き伏せるメフィストフェレスの如く知識の力で永遠の命を手にするよう誘惑する。
ピエターデは彼にゲーテの「ファウスト」の一節を読み聞かせるが、その場にバルタールが現れ、「大好きな作品で、ほとんど暗記している」と言ってメフィストの台詞を暗唱する。
ピエダーテは教授に『ファウスト』の英訳本を贈る。
二人のあいだには、男女を越えた精神の絆があった。
女の意地を感じたヘレンは、バルタールに、ピエダーテを森のなかで迷わせて永久に姿を消させることを条件にバルタールの欲望に答えるという。